主語を補いながら文章を読むコツとは?「羅城門の鬼」で主述関係を正しくとらえる

主語を補いながら文章を読むコツとは?「羅城門の鬼」で主述関係を正しくとらえる 文法
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 日本語の文章では、主語が省略される(=書かれない)ことがあります。省略された主語を正しく補いながら読まないと、話の内容がわからなくなったり、間違って読み進めたりすることがあります。

 今回は、文章の主語を補うコツを紹介します。練習問題もあります。

主語と述語を形式的に見つける方法

 日本語では、文を不自然にならないレベルで区切った最小単位を「文節」といいます。多くの場合、「ネ」や「サ」を入れて区切っていけば文節に分けられます。

 たとえば、「昨日は僕がUFOを見た。」を文節で区切れば、「昨日は(ネ)/僕が(ネ)/UFOを(ネ)/見た(ネ)。」です。

 さらに、文節の中で、動作や状態などの主体となるのが「主語」で、主語の動作や状態などを表すのが「述語」です。この説明だけではよくわからないので、形式的に主語と述語を見つけるといいでしょう。

 まずは、述語を見つけてしまいます。日本語の文では、原則として、文末(文の最後)の文節が述語です。「昨日は僕がUFOを見た。」ならば、「見た」が述語です。

 次に、主語になりそうな文節を見つけます。具体的には、「が」「は」「も」「こそ」「さえ」などが付いている文節が主語になる可能性があります。「昨日は僕がUFOを見た。」ならば、「昨日は」と「僕が」が主語になりそうです。

 さらに、見つけた文節を述語とくっつけてみて、意味がおかしくなければ、その文節が主語です。「昨日は僕がUFOを見た。」では、述語の「見た」に「昨日は」をくっつけると、「昨日(という何者か)は見た」という意味になっておかしくなります。一方、「僕が見た」で意味がおかしくないので、「僕が」が主語です。

省略された主語を補うコツ

 省略された主語を補うコツを紹介します。これらを意識しながら、文章を読むようにしましょう。

一文の中で主語は変わらない

「花子は幽霊を見て驚いた。」では、述語の「見て」「驚いた」に対する主語はどちらも花子です。このように、一文の中にいくつも述語がある場合、これらの主語は変わらないことが多いです。

 一文の中で主語が変わる場合、「花子は驚いて、太郎は驚かなかった。」のように主語がはっきり書かれているのが普通です。

直前の文の主語を引き継ぐ

「太郎は川に落ちた。そして、河童に足をつかまれた。」では、2文目の述語の「つかまれた」に対する主語は、直前の文の主語の「太郎は」です。このように、主語がある文と主語がない文が並んでいる場合、主語がない文は直前の文の主語を引き継ぐことが多いです。

会話文の主語は地の文から判断する

 太郎は花子にたずねた。
「幽霊を見たのかい?」
「うん、見たわ!」

 この会話文では、「幽霊を見たのかい?」で「あなたは」という主語が、「見たわ!」で「私は」という主語がそれぞれ省略されています。

 さらに、「あなたは幽霊を見たのかい?」と主語を補った上で、この「あなた」が「花子」であることを「太郎は花子にたずねた。」という地の文(会話文以外)から判断します。同じ地の文から「私は見たわ!」の「私」も「花子」とわかります。このように、会話文の主語は地の文から判断します

省略された主語を補う練習をしよう

 以下の問題で、省略された主語を補う練習をしましょう。

 本文は「羅城門(らしょうもん)の鬼」として有名な昔話です。羅城門は平安京(京の都)の正門です。「羅生門」ともいいます。

 また、渡辺綱(わたなべのつな)は、平安時代中期の武将・源頼光(みなもとのよりみつ)に仕えた武将で、「頼光四天王」の一人とされます。

 次の文章について、下線部①~⑪の主語をそれぞれ答えなさい。

 昔々、京の都に羅城門がありました。
 ある夜、羅城門の前を、馬に乗った渡辺綱が通りました。そこに一人の若い娘が現れました。綱は馬から降りて、娘に声をかけました。
「どうして夜中に①出歩いているのですか
「家に②帰らなければならないからです
「では、馬で③送りましょう
 綱はそう言って、娘の手を取りました。すると、娘は鬼の姿になって、綱の兜をつかみました。
 綱はすかさず刀を抜きました。そして、鬼の腕を④斬りつけました
 腕を斬り落とされた鬼は飛び上がり、「七日の間に必ず腕を取り返してやる」と叫んで、そのまま⑤消えてしまいました
 その後、綱は家にこもりました。戸や窓にお札(ふだ)を貼って、家の中にだれも⑥入れませんでした。七日間、鬼の腕を守るためです。
 七日目の夜のことでした。綱のおばが訪ねてきました。「今夜のうちにどうしても綱に⑦会いたいんじゃ」と⑧言います。それを聞いた綱は、おばを家の中に入れました。
 綱はおばに羅生門の鬼の話をしました。おばはとても喜んで言いました。
「その鬼の腕を見せてくれんかのう」
 綱はおばの願いを断れませんでした。箱を開けて、鬼の腕をおばに⑨見せました
 そのとき、おばは鬼の正体を現しました。そして、箱の中の腕をつかんで⑩叫びました
「綱よ、七日目の夜に腕を⑪取り返したぞ
 鬼は腕を持って外へ逃げました。綱は鬼を追いかけましたが、追いつけませんでした。鬼は空高く消えてしまいました。

① 主語は「あなたは」ですが、その「あなた」が誰なのかは「綱は馬から降りて、娘に声をかけました」から判断します。最初に声をかけた人物が綱なので、声をかけられている「あなた」は娘です。

主語を補いながら文章を読むコツとは?「羅城門の鬼」で主述関係を正しくとらえる

鳥山石燕『今昔百鬼拾遺』「羅城門鬼」(画像はWikipediaより)

② 主語は「わたしは」ですが、この「わたし」は綱のセリフに答えている人物なので娘です。

③ 主語は「わたしが」ですが、この「わたし」は娘のセリフに答えている人物なので綱です。

④ 前の文の主語を引き継ぐので「綱は」が主語です。

⑤ 文の途中で主語が変わっていないので、「鬼は」が主語です。

⑥ 前の文の主語を引き継ぐので「綱は」が主語です。

⑦ 主語は「わたしは」ですが、綱に会いたがっている人物なので、「わたし」はおばです。

⑧ 前の文の主語を引き継ぐので「おばは」が主語です。

⑨ 前の文の主語を引き継ぐので「綱は」が主語です。

⑩ 前の文の主語を引き継ぐので「おばは」が主語ですが、この時点でおばは正体を現しているので、「鬼が」の方がいいでしょう。

⑪ 主語は「わたしは」ですが、綱に呼びかけている人物なので、「わたし」は鬼です。

【解答】① あなたは(娘は) ② わたしは(娘は) ③ わたしが(綱は) ④ 綱は ⑤ 鬼は ⑥ 綱は ⑦ わたしは(おばは) ⑧ おばは ⑨ 綱は ⑩ 鬼は ⑪ わたしは(鬼は)

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