国語が苦手な受験生は「『大事なところに線を引きなさい』って言われるけど、どこに線を引いたらいいのかわからない」と悩みます。また、特に中学受験生の保護者は「子供に『国語では線を引きなさい』と言うけれど、子供は線を引かない」と嘆きます。
当サイト管理人のみみずくも、国語の指導では生徒に「線を引きなさい」と言います。自分で問題を解くときも線を引きます。しかし、みみずくの線引きは、一般的な国語の授業などで求められる線引きとは異なるみたいです。
そんなみみずくの線引きのルールを具体的に解説します。「どこに線を引くか?」で悩む受験生や、「子供に線を引かせたい」と思う保護者は、ぜひ参考にしてください。
そもそも「大事なところ」はどこなのか?
国語の授業で「本文を読みながら大事なところに線を引きなさい」って言われるわ。でも、どこが「大事なところ」なのかわからないから、線を引きたくても引けないのよ。
おいら、「どこに線を引くか?」を考えながら本文を読んでると、読むのが遅くなって、時間内に問題を解けなくなるんだ。だから、線を引かないで解いてたら、塾の先生に「線を引けや!」と怒鳴られちゃった。もちろん、その塾はさっさと辞めたけどね(笑)
幽美狐や狸雄の言うことはもっともです。そこで、多くの国語指導者がおすすめする線引きのルール(みみずくはおすすめしません)を紹介します。これを参考にして【文章】の「大事なところ」に線を引いてみてください。
<本文を読みながらどこに線を引くか?>(みみずくがおすすめしない「線引きのルール」)
- 繰り返し出てくる言葉(キーワード)
- 筆者の主張(「~と思う」「~が大切だ」などの文末表現で判断する)
- 逆接の接続語(「しかし」「だが」など)の後ろ
- まとめの接続語(「つまり」「要するに」など)の後ろ
- 抽象表現(具体例の前後)
【文章】次の文章を読みながら、大事なところに線を引きなさい。(実際に線を引きたい読者はPDFをダウンロードしてください)
錬金術とは、さまざまな金属から金を作り出そうとする秘術である。
古代ギリシアで活躍したアリストテレスは、全てのものは火、空気、水、土の四大元素からできていると考えた。この考えをもとにして錬金術が生まれた。
錬金術は、文化の中心として栄えていた古代エジプトからイスラム世界へと伝わった。その後、十二世紀にヨーロッパへ伝わって、多くの人々に研究された。
錬金術師たちは、あるものをよりよいものに変える賢者の石を作ろうとした。賢者の石を使えば、銅を金に変えることもできると考えられた。また、賢者の石は、エリクサーの材料ともいわれる。エリクサーは、人間を不老不死にする薬である。
しかし、錬金術は、賢者の石を作り出せなかった。その代わり、さまざまなものの性質や反応などを研究する化学を生み出した。
十八世紀には、元素の考え方が変わった。十九世紀には、元素の正体が原子であると考えられるようになった。これらの考えをもとにして、化学はどんどん発展していく。
二〇一六年六月九日、日本で新たに発見された元素のニホニウムが発表された。ニホニウムは人間によって作り出された元素である。このような現代の化学こそ錬金術と考えられないだろうか。
「大事なところ」に線を引けましたか?
繰り返し出てくる言葉は「錬金術」だから、とりあえずすべての「錬金術」に線を引きました。それから、「元素」も何回も出てくるから、線を引いた方がいいのかな?
おいらは、「しかし」の後ろの「錬金術は、賢者の石を作り出せなかった」に線を引きました。
他にも、「金」「エリクサー」の抽象表現「よりよいもの」が含まれる「錬金術師たちは、あるものをよりよいものに変える賢者の石を作ろうとした」に線を引きました。
最後の一文は「考えられないだろうか」という疑問形だけど、「考えられる」って意味だと思うんです。だから、「このような現代の化学こそ錬金術と考えられないだろうか」は筆者の主張ってことで、線を引くべきですか?
いろいろな線の引き方があると思うので、そのくらいにしておきましょう。
線引きしたところは問題を解くのに役立つか?
今度は、次の【問題】を解いてみましょう。このとき、【文章】で線引きしたところが解答に役立つかどうか、チェックしてください。
【問題】次の文章を読んで、後の問いに答えなさい。(書き込みなどをしながら問題を解きたい読者はPDFをダウンロードしてください)
錬金術とは、さまざまな金属から金を作り出そうとする秘術である。
古代ギリシアで活躍したアリストテレスは、全てのものは火、空気、水、土の四大元素からできていると考えた。この考えをもとにして錬金術が生まれた。
錬金術は、文化の中心として栄えていた古代エジプトからイスラム世界へと伝わった。その後、十二世紀にヨーロッパへ伝わって、多くの人々に研究された。
錬金術師たちは、あるものを①よりよいものに変える賢者の石を作ろうとした。賢者の石を使えば、銅を金に変えることもできると考えられた。また、賢者の石は、エリクサーの材料ともいわれる。エリクサーは、人間を不老不死にする薬である。
しかし、錬金術は、賢者の石を作り出せなかった。その代わり、さまざまなものの性質や反応などを研究する化学を生み出した。
十八世紀には、元素の考え方が変わった。十九世紀には、元素の正体が原子であると考えられるようになった。これらの考えをもとにして、化学はどんどん発展していく。
二〇一六年六月九日、日本で新たに発見された元素のニホニウムが発表された。ニホニウムは人間によって作り出された元素である。このような②現代の化学こそ錬金術と考えられないだろうか。
問一 ―部①「よりよいもの」の例を本文中からすべて抜き出しなさい。
問二 ―部②「現代の化学こそ錬金術と考えられないだろうか」とあるが、筆者が現代の科学を錬金術と考えるのはなぜですか。その理由として最も適当なものを次の中から一つ選び、記号で答えなさい。
ア 元素の考え方が変わったから。
イ 元素の性質などを研究するから。
ウ 新たに元素を発見しているから。
エ 人間が元素を作り出しているから。
問三 本文の内容に合致する文として最も適当なものを次の中から一つ選び、記号で答えなさい。
ア 錬金術のもとになる四大元素の考えは古代エジプトで生まれた。
イ 錬金術は文化の中心のヨーロッパからイスラム世界へ伝わった。
ウ 化学が生まれる前は賢者の石を作ろうとする錬金術が盛んに研究された。
エ 元素の正体が原子であるという考え方をもとに錬金術が大いに発展した。
先ほど【文章】を読みながら線を引いたところは、【問題】を解くのに役立ちましたか?
役立つどころか、私が線を引いたところが傍線部になってます。
「しかし」の後ろだからって線を引いても、解答の参考になりませんでした。
【問題】は、いわゆる「大事なところ」に線を引きながら読んでも解けないように、みみずくが作ったものです。「【文章】も【問題】もみみずくのオリジナルだから、単なる嫌がらせだ」と思う読者もいるでしょう。
しかし、最近の入試などの国語では、細部をていねいにチェックしないと解けない問題が少なくありません。そのため、説明的文章(説明文や評論文など)では、筆者の主張をざっくりとらえるため本文に線を引くだけでは正解できないことが多いようです。
そのため、みみずくは、本文を読みながら「大事なところ」に線を引くのではなく、問題を解く手がかりになるところに線を引くことをおすすめしています。本文をザッと一読した後、各問題を解く上で必要な範囲で本文を読み直し、そのときに線を引いていくという解き方です。
問題を解く手がかりになるところはどこか?
以下では、【問題】の解説を通して、「問題を解く手がかりになるところはどこか?」を具体的に示します。
問一 具体例を抜き出す問題
まずは、問題文の中の「何を答えるか?」「どのように答えるか?」に線を引きましょう。
問一では、「何を答えるか?」は「『よりよいもの』の例」で、「どのように答えるか?」は「すべて抜き出しなさい」です。
次に、本文の傍線部に戻って、傍線部が埋まっている文全体に線を引きましょう。
問一では、傍線部①のある「錬金術師たちは、~を作ろうとした」に線を引きます。中でも「に変える」をグルッと○で囲っておくのがおすすめです。賢者の石を使ってAをBに変えるわけですが、今回答えるべきはBの方だとわかります。
ここまで準備したところで、最後に本文中の解答の根拠に線を引きます。傍線部①のある文の次の文で、「銅を金に変える」の「に変える」を○で囲いましょう。この「に変える」が目印となって、直前にある「金」が一つめの答えだとわかります。
「銅を金に変える」に線を引いて、その横に「一」と書いておきましょう。この「一」は「問一の解答の根拠」を示します。目印をつけておくことで、後で見直すときに探しやすくするのが目的です。(以下、このような目印についての説明は省略します)
続いて、次の文の「の材料」が「に変える」と同じだと判断し、○で囲った上で、「エリクサーの材料」にも線を引きましょう。「エリクサー」が二つめの答えです。
問二 傍線部の理由を説明する問題
問二では、「何を答えるか?」は「筆者が現代の科学を錬金術と考えるのはなぜ(理由)」で、「どのように答えるか?」は「最も適当なもの」「一つ」です。
本文の傍線部に戻って、傍線部が埋まっている文全体に線を引くと、「このような」があることに気づくでしょう。「このような」は指示語なので、その指示内容を明らかにする必要があります。直前の一文「ニホニウムは~元素である」が指示内容のように思われますが、本当にそうなのでしょうか?
さらに、傍線部中のより詳しく説明すべき言葉を丸で囲みます。傍線部②は「現代の科学=錬金術」なので、「錬金術」の意味を明らかにしましょう。
「錬金術」という言葉をたどると、本文の最初の一文に「錬金術とは」とあるので、この一文に線を引きましょう。ここから「錬金術」は「金を作り出そうとする秘術」だとわかります。
「作り出す」に注目すると、傍線部②の直前の一文にも「作り出された」とあります。したがって、この一文が「このような」の指示内容で問題ないので、線を引きます。線を引いた2つの文から「現代の科学=錬金術=作り出すこと」と判断し、問二の答えはエを選びます。消去法を使うまでもありません。
問三 本文内容に合致する文を選ぶ問題
問三では、「何を答えるか?」は「本文の内容に合致する文」で、「どのように答えるか?」は「最も適当なもの」「一つ」です。
本文全体に関する問題は消去法で解きます。ただし、あいまいな記憶を頼りに選択肢を検討するのではなく、いちいち本文に戻って選択肢の正誤をていねいに確認することが大切です。このとき、選択肢中の特徴的な言葉に線を引きましょう。
特徴的な言葉とは、本文で1回(数回)しか出てこない言葉です。アの「四大元素」、イの「文化の中心」、ウの「化学が生まれる」、エの「元素の正体が原子」にそれぞれ線を引いて、本文中から同じ言葉を探します。
本文中で特徴的な言葉を含む文を見つけたら、選択肢とじっくり見比べます。たとえば、アの「四大元素」は2段落にあります。2段落「古代ギリシアで活躍したアリストテレスは~考えた」から、アの選択肢の「考えは古代エジプトで生まれた」は誤りだとわかります。このように、選択肢中の誤りの言葉を見つけたら線を引いて×を付けましょう。
同様に、イは「ヨーロッパ」に、エは「錬金術」にそれぞれ線を引いて×を付けられるので、残ったウが問三の答えです。
線を引くところのまとめ
ここまでの説明をまとめます。また、実際にみみずくが線を引いた問題用紙も公開します。
<どこに線を引くか?=問題を解く手がかり>(みみずくがおすすめする「線引きのルール」)
- 「何を答えるか?」「どのように答えるか?」
- 傍線部が埋まっている文全体
- 本文中の解答の根拠
- 傍線部中のより詳しく説明すべき言葉
- 選択肢中の特徴的な言葉
- 選択肢中の誤りの言葉
本文を読みながら線を引く意味はあるのか?
本文を読みながら線を引いちゃダメなんですか?
ダメなわけではありません。自分なりに理由があって線を引くなら、それはいいことです。ただ、「『線を引きなさい』と言われたから」という理由で線を引いているだけなら、意味はないと思います。
「本文を読みながら線を引いたところに解答の根拠がある」と言う先生もいます。
少なくとも僕は、そういう超能力の開発を生徒にすすめません。本文のどこが解答の根拠になるかは、問題(設問)を確認しない限りわからないはずです。
線を引きながら読むと、時間がかかる上に、本文が線だらけになって、却って問題を解きにくくなるんですよ。
線を引きながら読んでいたら、本文が汚くなってしまったというのは、よく聞きます。勉強が苦手な受験生が、参考書をマーカーで塗りまくってカラフルにするのと同じです。しかも、線を引くのに時間を取られて問題を解き終わらなくなるのもありがちな失敗です。
国語で時間が足りなくなる原因を、受験生はちゃんと分析した方がよさそうですね。
そういえば、国語指導のとき、中古で入手した模試の過去問を使ったことがあります。前の所有者が本文にかなり細かく線を引いていて、その痕跡が残っていました。これらの線は、解答の根拠(模範解答の解説で引用されている箇所)をすべて外していました(笑)
うわあ、そんなことってあるんですね。もはやホラー!
解答の根拠をすべて外して線を引くって、ある種の才能なんじゃないですか?(笑)
今回は、みみずくが国語を指導するときや、自分で問題を解くときの線引きのルールを紹介しました。もちろん、「みみずくのルールが絶対に正しくて、他のルールが間違っている」と主張するつもりはありません。受験生の皆さんは、自分に合った線引きのルールを確立することが大切です。
みみずくのルールは一般的ではないと思います。しかし、僕の好きな国語講師の宗慶二先生が、僕と一部同じような解説をしていたので、そのYouTube動画を以下で紹介します。こちらも参考にしてください。
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