トイレの花子さんが夜道を歩いています。ため息をつきながら、とても憂鬱そうです。
そんな花子さんに声をかけたのが、髪が伸びる市松人形のいっちゃんでした。
はなちゃん、こんばんは。いつもは学校のトイレにこもってるのに、今夜はどうしたの?
ターボ先輩と口裂け先輩に呼び出されちゃって……。
えっ、ターボババアと口裂け女に……!? いったい何があったの?
2人は「どっちが足が速いか?」でケンカになっちゃって、その仲裁として私が呼び出されたってわけ。2人とも都市伝説系妖怪の大先輩だから断れなくて……。
それは災難ね。私もついていってあげるわ。
ターボババアと口裂け女のケンカを上手く解決するにはどうすればいいのでしょうか?
花子さんやいっちゃんと一緒に速さについて考えましょう。今回は速さの基礎の基礎を説明するので、中学受験しない小学生の皆さんにも役立つはずです。
「速い」「遅い」ってどういう意味なの?
【問題】ターボババアと口裂け女がケンカをしています。
ターボババア「あんたみたいな小娘には負けないよ。あたしはここまで来るのに、80kmの高速道路を45分で走ってきたんじゃぞ!」
口裂け女「あ~ら、おばあちゃん、無理しちゃダメよ! 私は100mを3秒で走れるんだから、私の方が足が速いに決まってるわ」
ターボババアと口裂け女のどちらが足が速いでしょうか。
2人に今からここで走ってもらえばいいんじゃない?
それはそうなんだけど、どっちの方が足が速いか、計算すればわかるはずよ。
そもそも「速い」「遅い」ってどういう意味なの?
普段の生活でも「速い」「遅い」という言葉をよく使います。しかし、いっちゃんのように、「『速い』『遅い』ってどういう意味なの?」に上手く答えられない小学生は多いでしょう。
というわけで、「速い」「遅い」について説明します。
まず、「速い」「遅い」という場合、2人(2匹、2個など)以上を比べる必要があります。一人で走っていて、誰とも比べなければ、その人の足が速いのか遅いのかはわかりません。
次に、「速い」「遅い」を決めたい場合、時間か距離のどちらかを等しくする(一定にする)必要があります。この後で、時間や距離をそれぞれ一定にして、ターボババアと口裂け女のどちらが足が速いかを決めていきます。
時間や距離を等しくするとどうなる?
【問題】では、ターボババアが80kmを45分で走り、口裂け女が100mを3秒で走ることがわかっています。2人の時間と距離をそれぞれ等しくしてみましょう。
時間を等しくする
ターボババアの45分は45×60=2700(秒)です。つまり、2700秒で80kmを走ります。
一方、口裂け女は3秒で100mを走るので、3秒を900倍して2700秒にすると、距離も100×900=90000(m)になります。90000mは90kmです。
2人の時間を2700秒にそろえると、80km走るターボババアよりも、90km走る口裂け女の方が足が速いことがわかります。
時間を等しくすると、進む距離が長い方が速いということです。
距離を等しくする
ターボババアの80kmは80000mです。つまり、80000mを走るのに45分かかります。
一方、口裂け女は100m走るのに3秒かかるので、100mを800倍して80000mにすると、時間も3×800=2400(秒)になります。2400秒は40分です。
2人の距離を80000mにそろえると、走るのに45分かかるターボババアよりも、40分しかかからない口裂け女の方が足が速いことがわかります。
距離を等しくすると、かかる時間が短い方が速いということです。
いちいち時間や距離をいくつにそろえるかを考えるのは面倒だわ。しかも、距離を等しくしたら、小さい数になる方が速いってのも、直感的にわかりにくいと思う。
だから、「速さ」を求めるんじゃないの?
「速さ」っていったい何なの?
いっちゃんが言うように、時間や距離をいろいろな数にそろえるのは面倒ですし、場合によっては混乱してしまいます。これを防ぐのに便利なのが「速さ」です。
「速さの3公式」の意味
速さとは、単位時間あたりに進む距離です。「単位時間」の「単位」とは「1」という意味です。そのため、次の3つの速さがよく使われます。
- 時速 … 1時間あたりに進む距離。
- 分速 … 1分間あたりに進む距離。
- 秒速 … 1秒間あたりに進む距離。
単位時間(1時間、1分間、1秒間)あたりに進む距離を求めたければ、距離を時間で割ればいいこともわかるでしょう。そのため、「距離÷時間=速さ」になります。この式と、この式を変形した2つの式を合わせて「速さの3公式」といわれることがあります。
- 距離÷時間=速さ
- 距離÷速さ=時間
- 速さ×時間=距離
速さは、どんな場合でも時間を1にそろえるので、比べるのに便利です。また、数が大きいほど速いといえるので、直感的にもわかりやすいでしょう。
単位が違う場合の速さの求め方
ターボババアは80kmを45分で走るので、80÷45=1.77…より大体の速さは分速1.8kmです。一方、口裂け女は100mを3秒で走るので、100÷3=33.33…より大体の速さは秒速33.3mです。
ただ、2人の速さの単位は「分速●km」と「秒速●m」で全然違います。単位が違う速さ同士を比べて「数が大きい口裂け女の方が足が速い」とはいえません。
分速1.8kmを秒速●mに変換するか、秒速33.33mを分速●kmに変換することも可能ですが、計算がやや面倒です。こういう場合、速さを計算で求める前に時間と距離の単位をそろえましょう。
【問題】では、小数の計算を避けるため、ターボババアの時間と距離の単位を変換します。80kmは80000mで、45分は45×60=2700(秒)です。したがって、80000÷2700=29.62…より、ターボババアの大体の速さは秒速29.6mです。
2人の速さを「秒速●m」にそろえたところで、秒速29.6mのターボババアよりも、秒速33.3mの口裂け女の方が足が速いことがわかります。
そういえば、速さの勉強をしてる子が「木の下のハゲジジイ」って言ってたんだけど、何だかわかる?
「きはじ」や「みはじ」(み=道のり=距離)といわれるテントウムシのことね。下の図のように円を三分割して「き」「は」「じ」と書いて、求めたいものを指で隠すと式が出てくるのよ。
「き」が上にあって、その下に「は」と「じ」があるから、「『き』の下の『は』ゲ『じ』ジイ」なんだ。でも、こんなのを使う必要はあるのかしら?
使いたい人は使えばいいと思うけど、速さの意味を理解してれば要らないはずよ。
ターボババアと口裂け女はどんな妖怪?
ターボババアと口裂け女のケンカは算数で解決しました。それはそうと、ターボババアと口裂け女はどんな妖怪なのでしょうか?
ターボババアとは?
ターボババアは、走っている自動車と並走したり、自動車を追い越したりする老婆の妖怪です。「ターボばあちゃん」「ジェットババア」「100キロババア」などとも呼ばれます。兵庫県の六甲山に出没するともいわれます。
ターボババアの走る速さには諸説あります。「100キロババア」の異名からもわかる通り、100~140キロで走ると考えられます。
人間に直接的な危害を加えるわけではないようです。ただ、車の窓からふと外を見たら、おばあさんが走っているわけですから、運転手は驚いて事故を起こしかねません。そのため、事故を誘発する妖怪と考えられることもあります。
口裂け女とは?
口裂け女は、 1979年の春から全国に広まって社会問題を引き起こした妖怪です。口を完全に隠す大きなマスクをした女が、学校帰りの子供に 「私、キレイ?」と訊ねます。「きれい」と答えた子供には「これでも?」と言いながらマスクを外して、耳元まで大きく裂けてた口を見せて驚かせます。「きれいじゃない」と答えると包丁などで子供を切りつけます。
口裂け女の噂が広まったことで、パトカー出動騒ぎになったり、子供たちが集団下校したりするほどでした。しかし、1979年8月に噂は途絶えて、騒動は収まりました。
後に、口裂け女は整形手術で失敗した女性が正体である、三姉妹で全員の口が裂けている、べっこう飴が大好物だ、「ポマード」と3回唱えると逃げていく、などのさまざまな情報が付け加えられていきました。その中の一つが、【問題】の「100mを3秒で走る」です。
webムーの記事でも解説されていますが、逃げる人間を追いかける山姥のイメージは昔話「三枚のお札」などに見られます。このイメージが現代によみがえると、ターボババアや口裂け女になるのでしょう。
口裂け女は1995年の東宝映画『学校の怪談』にも登場するし、単体で出演している『口裂け女』などの映画もあるわ。『ひきこさん VS 口裂け女』や『口裂け女 vs カシマさん』では他の妖怪とも戦っていて、大人気なのよ。私の憧れの先輩だわ。
ターボババアは、2024年10月からTVアニメが放送された『ダンダダン』で、主人公の高倉健にとり憑いちゃうんだよね。イ●モツを奪うエロババアとして描かれていて、ますます人気が出そうな気がする。時代は熟女を求めてる!
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