中学3年生の狸雄は育ち盛りで常にお腹を空かせています。
そんな狸雄の前に現れたのが豆腐小僧です。豆腐小僧は「とっても美味しい豆腐が2種類あります。どちらも安くてお買い得ですよ!」と言いますが――。
う~ん、豆腐壱と豆腐弐のどっちにしようかな?
何を悩んでんのよ? どっちの豆腐も1丁が50円未満なんだから、好きな方を買えばいいじゃない。
おいらの厳しいお小遣い事情だと、1円単位で切り詰めないと……。
貧乏狸は嫌ね。そんなんだからモテないのよ。
何も食べなくていい便所幽霊(トイレの花子さんだから)に、おいらの葛藤がわかるものか!
便所幽霊? 私を馬鹿にしてるの? 失礼だわ。
そっちが先に「貧乏狸」って言ったんだろ?
狸雄と花子の見苦しい言い争いはさておき、「安い」とはどういうことかを小学生の皆さんも真剣に考えましょう。大人になると、お金をかけずに生活の質を向上させることを求められます。
値段が低い方が安いわけではない?
【問題1】豆腐小僧が売っている豆腐には2種類あります。豆腐壱は1丁300gで40円、豆腐弐は1丁350gで45円です。ただし、消費税は考えないものとします。
お金がないなら、1丁40円の豆腐壱を買えばいいじゃない。
いや、おいらは豆腐弐を買うよ。豆腐弐の方が豆腐壱より安いからね。
狸雄が「豆腐弐の方が豆腐壱より安い」と言った理由を説明しましょう。
豆腐壱と豆腐弐を1丁あたりで比べれば、豆腐壱の方が安いように思われます。しかし、単純に「値段の低い方が安い」とは言い切れません。1丁あたりの重さが違うからです。
日本では、物価高騰の影響で「ステルス値上げ」を行う企業が増えました。ステルス値上げとは、商品の値段は以前と同じなのに、量が以前よりも減っていることです。「値段を変えない企業は良心的だ」と考えて、商品の量をきちんとチェックしないと、企業にまんまとだまされてしまいます。
2024年10月には、コンビニ大手のSが販売する「上げ底」弁当が話題になったよね。SNSでは、弁当をパッと見ただけではわからないけど、容器の形のせいで容量が減っている、という指摘が相次いだんだ。
でも、Sの社長は「そんなアコギなことはできない」と言って、「上げ底」を否定したのよね。それでさらに炎上したってわけ。
Sの商品は、「上げ底」だけじゃなく、具がスカスカのおにぎりやサンドイッチ、量がわからないカップの飲み物など、いろいろ問題がありそうだ。
そもそもコンビニは割高だから、あんたみたいな貧乏狸が利用すべきじゃないわ。
1gあたりの値段を比べるとどちらが安い?
「どちらが安いか?」「どちらが速いか?」「どちらが混んでいるか?」などを比べる場合、単位量あたりの大きさを計算すると便利です。
単位量あたりの大きさは、1に対応する量です。そもそも「単位」は「1」を意味します。
単位量当たりの大きさの例としては、「1個あたり80円(単価)」「1時間当たり60km=時速60km(速さ)」「1km2あたり150人(人口密度)」などがあります。
【問題1】では、1丁あたりの値段を比べれば、豆腐壱は1丁あたり40円、豆腐弐は1丁あたり45円です。さらに、「1丁あたりの値段÷1丁あたりの重さ=1gあたりの値段」を計算すると次の通りです。
- 豆腐壱:40÷300=0.1333… → 1gあたり約0.133円
- 豆腐弐:45÷350=0.1285… → 1gあたり約0.129円
この計算結果から、狸雄が「豆腐弐の方が豆腐壱より安い」と言ったのは、1gあたりの値段を比べたからだとわかります。
トイレットペーパーの値段を比べるには?
ところで、花子はどうして町に出てきたの? 普段はトイレに引きこもってるじゃん。
トイレットペーパーがなくなったから買いに来たのよ。厠神(かわやがみ。トイレの神様で、現在の花子の保護者)から「できるだけ安いのを買ってくるように」って言われてるんだけど……。
【問題2】スーパーで売られているトイレットペーパーには2種類あります。トイレットペーパーAは、1ロールが60mで、12ロール入って298円です。トイレットペーパーBは、1ロールが50mで、18ロール入って398円です。ただし、消費税は考えないものとします。
花子はできるだけ安いトイレットペーパーを買わなければなりません。どちらのトイレットペーパーを買うべきでしょうか。
トイレットペーパー1ロールの値段を求めます。「値段÷ロール数=1ロールの値段」です。
- トイレットペーパーA:298÷12=24.8333… → 1ロールあたり約24.833円
- トイレットペーパーB:398÷18=22.1111… → 1ロールあたり約22.111円
この計算結果から、トイレットペーパーBの方がトイレットペーパーAより安いといえそうです。しかし、1ロールの長さまで考えるとどうでしょうか?
トイレットペーパー1mあたりの値段を求めます。「1ロールあたりの値段÷1ロールあたりの長さ=1mあたりの値段」です。
- トイレットペーパーA:24.833÷60=0.4138… → 1mあたり約0.414円
- トイレットペーパーB:22.111÷50=0.4422… → 1mあたり約0.442円
1mあたりの値段を比べると、トイレットペーパーAの方がトイレットペーパーBより安いので、トイレットペーパーAを買うべきです。
どのトイレットペーパーを買うかは値段だけで決められないんじゃない? シングルかダブルか、バージンパルプ100%か再生紙か、香り付きか香り無しかなど、いろんな違いがあるからね。
小学校のトイレに設置するトイレットペーパーは、安くて長持ちするものが一番よ。小学生に贅沢させちゃダメ!
豆腐小僧はどんな妖怪なの?
冒頭に登場した豆腐小僧は、江戸時代後期以降の草双紙や錦絵などに描かれてきた妖怪です。頭に笠をかぶり、豆腐をのせた盆を手に持った子供の姿をしています。豆腐小僧に関する伝承などは存在しないため、ある時期に創作された妖怪だとみられています。
豆腐小僧は、人間に悪さをする妖怪として描かれることはほとんどありません。それどころか、他の妖怪たちにいじめられることもあるほどです。
しかし、昭和以降に出版された妖怪図鑑などでは、「豆腐小僧の豆腐を食べた人は全身にカビが生える」と書かれています。この記述は、江戸時代の資料に根拠がなく、図鑑の執筆者が創作的に付け加えたものとされます。
コメント