高校3年生の霧斗は、大学受験の勉強そっちのけで悪魔祓いのバイトに打ち込んでいます。そんなある日、疲れのせいか、悪魔の罠にハマって命を落としてしまいました。
この世とあの世の境目をウロウロしている霧斗の魂は、死神に声をかけられました。
死神は「おまえには、魂を持ち去る悪魔をたくさん退治してもらった恩がある。だから、私の仕事を手伝ってくれれば、おまえを生き返らせてやろう」と言います。
仕事? 最近流行りの闇バイトじゃないなら手伝うよ。
弁償算はどんな特殊算なの?
【問題】死神は霧斗に手伝いの内容を話しました。それは次の通りです。
「私が集めた100匹の魂をあの世へ連れて行ってほしい。無事に魂を1匹連れて行ってくれたら、寿命を1年伸ばしてやる。しかし、魂は逃げることがあるから注意するんだ。魂を1匹逃がしたら、寿命を3年縮めるぞ」
霧斗は死神の仕事を手伝った後、72年の寿命をもらって生き返りました。霧斗が逃がした魂は何匹ですか。
【問題】のように、成功したら数値(お金や点数など)が増える一方で、失敗したら減るという状況を考える特殊算が「弁償算」です。
弁償算というくらいですから、コップや皿などを運ぶ仕事で、運ぶものを割ると弁償させられるという設定の問題が有名です。また、ゲームの勝敗で点数が増減する問題もよく出ます。
弁償算はつるかめ算の応用なので、つるかめ算と同じく表や面積図などを利用すれば解けます。しかし、数値が減るので、少し工夫が必要です。(つるかめ算がわからない場合は以下の記事を読んでください)
労働者が仕事中にコップや皿を割ったとしても、基本的に弁償させられることはないよ。労働者が指示を無視した場合や不適切な行動をした場合などを除いて、雇用主が労働者に弁償させるのは労働基準法違反なんだ。
弁償算を表で解く
弁償算で大切なのは、つるかめ算と同じく仮定です。【問題】では「すべての魂を連れて行ったと仮定すると」からスタートしましょう。
すべての魂を連れて行ったと仮定すると、霧斗の寿命は1×100=100(年)伸びます。ここで魂を1匹逃がしたとすると、何年寿命が縮むでしょうか?
とりあえず次のような表を作ってみましょう。「もらった寿命=伸びた寿命-縮んだ寿命」で求められます。また、□は逃がした魂の数です。
逃がした魂 | 0匹 | 1匹 | 2匹 | … | □匹 |
---|---|---|---|---|---|
伸びた寿命 | 100年 | 99年 | 98年 | … | (100-□)年 |
縮んだ寿命 | 0年 | 3年 | 6年 | … | 3×□年 |
もらった寿命 | 100年 | 96年 | 92年 | … | 72年 |
魂を1匹逃がすと、寿命が4年縮んでいます。1匹逃がした分の3年だけでなく、伸びるはずだった1年も縮むからです。
このように、弁償算では減る数値と増える数値の和を考える必要があります。
すべての魂を連れて行ったと仮定したときにもらった寿命100年と、【問題】に書かれている寿命72年の差(引き算の結果)は、100-72=28(年)です。したがって、28÷4=7(匹)の魂を逃がしたことがわかります。
悪魔祓いでも、日給5万円のバイトAが入ってる日に、「どうしても」って頼まれて(というか、バイトAより高い報酬に目がくらんで)、日給8万円のバイトBを入れることがあるんだ。もちろん、バイトAを断るよね。
それなのに、急にバイトBをキャンセルされると、もらえるはずだった日給8万円だけじゃなく、断ったバイトAの日給5万円ももらえないから、合計で13万円の損失になる。
誰かに仕事を頼むとき、既に予定が入っているところに無理やりねじ込みたければ、後のことをよ~く考えよう。そのねじ込んだ仕事をキャンセルすると、相手に大きな損失を与えるからね。こういうのに無頓着な人は間違いなく地獄に落ちるよ。だから、絶対にやっちゃダメ!
弁償算を面積図で解く
弁償算で面積図を描く場合、下の図のように、増える数値の下に減る数値を描くとよいでしょう。
もらった寿命は、長方形アの面積と長方形イの面積の差(ア-イ)で表されます。しかし、長方形アも長方形イも横の長さがわかりません。そこで、下の図のように、長方形ウを描きます。
ア-イ=(ア+ウ)-(イ+ウ)なので、もらった寿命は4×□-3×100=72で表せます。したがって、□=(72+300)÷4=93(匹)となり、100-93=7(匹)の魂を逃がしたことがわかります。
弁償算に限らず、重なる部分も含めて2つの図形の面積を求める方法は算数でよく使います。
弁償算を消去算で解く
計算に自信があるなら、弁償算を消去算で解いてもいいでしょう。
あの世へ連れて行った魂を□匹、逃がした魂を△匹とすると、次の式が成り立ちます。
- 魂の数の合計:□+△=100 … ①
- もらった寿命:1×□-3×△=72 … ②
①の式を3倍すると、3×□+3×△=300 … ③なので、③+②で4×□=372となって、□=372÷4=93(匹)です。
□=93を①に代入して、93+△=100より△=100-93=7(匹)の魂を逃がしたことがわかります。
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